スペイン南部のアンダルシア地方に伝わる芸能「フラメンコ」。しかし意外にも、その歴史には不明な点が多いことで知られています。ここではフラメンコの歴史を紐解くコラムをご紹介します。
フラメンコはアンダルシアの偉大な芸術として知られており、事実アンダルシアを象徴する芸術である。しかし多くの人がそう思っているにもかかわらず、この音楽的芸術が突然、自然発生的に生まれたとは考えられず、何世紀も何千年にも渡って大衆の文化、および学術的な文化として生存してきたと考えるとしても、今日我々が知っている事柄からすれば、フラメンコは200年以上も経っていない歴史の浅い芸術であるとみなされなければならないのである。
フラメンコの歴史は、19世紀半ば以前のものは、実在の人物によって集められた具体的なデータがなかった。この時期までのデータは全て、推論、思索、直感に概して論理的な理論にすぎない。
スペインで知られる古い文明として、アンダルシアで形成された紀元前6~ 5世紀のタルセソス王朝がある。その後、ギリシア人、フェニキア人、カタルゴ人、ローマ人、ビサンチン人、ヴァンタル人、アラーノ族、西ゴート族、イスラム教徒が侵入した。
ジプシーやユダヤ民族は、アンダルシアに集まった共同体であった。これらの村々では、各々の文化がアンダルシア土着民と混ざり合い、そしてそれぞれの村同士もが同じような比率で混ざり合った。この人種のるつぼから、次第にカンテ・フラメンコが生まれていったのであろう。
このはっきりとしない先史時代の時期が過ぎ、19世紀半ば頃、フラメンコに具体的なデータが現れる。作家のセラフィン・エステバネス・カルデロンが1847年に出版した本「エスセナス・アンダルーサス」の中で、フラメンコ夜会について記したのだ。この時期まで人々は、個人的な集会や宿、露店、農場などで歌っていた。