マルティネーテ
フラメンコ曲種解説
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MARTINETE マルティネーテ
フラメンコ曲種解説をご紹介します。名前の由来と歴史
18世紀、スペインではカルロス3世の治世の間、ジプシーたちの多くが迫害を受け投獄された。保釈と交換に過酷な労働任務を課す圧力もかけられた。また迫害から逃げるため、山の中に身を隠すジプシーもいた。カンテ・フラメンコ発祥の歴史は東洋の伝承芸能を持つジプシーとスペイン各地に土着した芸能文化を持つ人々とが融合したところから涌き出ている。この時代、ジプシーたちが敵対する環境のなかで葛藤してきた背景と、同じような状況にあったユダヤ人や飢えや処罰から逃げたカステジャーノ人たちとの文化の混ざり合いもフラメンコを生み出している要素となっている。ジプシーたちは苦しみの悲痛な叫びを、隠れた場所で歌った。このあまりにも多くの感情を表現する歌の深さのため、伴奏を必要としなかった。この歌がトナの源流であり、そしてマルティネーテが生まれた。伝承的に鍛冶屋がマルティネーテの誕生の場であるとされているのは、当時、鍛冶がジプシーの主な仕事であり、無伴奏ではあるがユンケと呼ばれる鍛冶の金床によるリズムで歌われていることにある。本来コンパスの無い自由なこの歌は、嘆き悲しむ節回しを発展させた。
特色
カンテ・ビエホと呼ばれジプシーの古き深い絆の歌である。
パロ・セコ(乾いた曲種)と呼ばれる無伴奏による歌のグループに入る。バイレのレパートリーとしてシギリージャと組み合わせて踊られることも多く、無伴奏の部分をバストンを用いて踊ることもある。
音楽形式
トナから派生し、無伴奏で歌われるが、踊りの場合コンパスがシギリージャと同じように刻まれる。
歌の形式
マルティネーテは、常に8音節の4行詩で構成されている。しかしながら、また新しいところで、10音節で5行と6行の詩も現れている。歌詞には慣習的な人生を過ごすことに対しての悲嘆屈辱が詰め込まれ苦痛や叫びを爆発させている。マルティネーテは自然のままに歌うスタイルとこまかなメリスマの多い“レドブラオス”と呼ばれるスタイルがあり、この2つを繰り返して終わることもある。
レトラ紹介
Las *mares de toítos los serranos
toítas iban al tren;
y yo, como no la tengo,
nadie me venía a *vé.
ジプシーのおふくろはひとり残らず
汽車までかけつけたんだ
だが、おふくろのねえ俺には
誰も逢いにゃ来なかったさ。
*mares = madres
*vé = ver