タランタ タラント
フラメンコ曲種解説

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TARANTA y TARANTO タランタ タラント

フラメンコ曲種解説をご紹介します。

名前の由来と歴史

カンテ・ミネロ・レバティノ(東方の鉱山の歌)またはカンテ・レバンテと呼ばれている曲種の中で最も名高い曲タランタは鉱夫の嘆きの歌だといわれる。起源地はアンダルシア東部の町アルメリアである。古いファンダンゴからタランタが生み出され、その後、リズムが自由なタランタの形式から、2拍子のはっきりした強いアクセントを持つコンパスに変わった曲タラントが生まれた。タラントはカンテ・レバンテの中で舞踊を伴なう唯一の曲となった。この当時、アルメリアの住民は俗語でタランタと呼ばれていた。本来のカンテ・フラメンコでなく生まれたタランタは、19世紀の半ば頃にはフラメンコの影響を受けて現在の容貌を得た。この2つの曲種は鉱山をテーマとした特徴を吸収したレバンテ地方を通って、西のハエンやシウダ・レアルや北のアルバセーテ、ムルシア、アリカンテまで広がり普及していった。カンテ・ミネラ・レバンティノの創始者として尊敬され、これらの歌の普及をした歌い手がロホ・エル・アルパルガテーロ(本名アントニオ・グラウ・モーラ)である。ジプシーではない彼は若い時期に仕事でアンダルシアを広く歩き回り、多くの優れた歌い手達と接し、格調高いレバンテの歌を創り上げた。後にラ・ウニオンとカタルへナでカフェ・カンタンテの先駆者となり、また興行主としても多くの業績を残した。カンテ・レバンテと呼ばれる曲には他にカルタヘネーラ、ミネーラ、ムルシアーナが挙げられる。
特色

タラントの歌はゆっくりとしたテンポで、コントラストの強い地味で男性的である。ゆっくりとしたギター伴奏によるリズムと独特の響きが際立ち、踊り手にとっても今日では重要なレパートリーとなっており、その踊りは壮大で情感が強く、タラントは、鉱山に葬り去られた痛みや苦悩の全てが現れた美しい歌である。
音楽形式

ファ♯を主音とするナチュラル旋法。ギター楽器の機能上、ソレアやシギリージャのミやラを主音とするナチュラル旋法とは、全く異なった不協和音の響きを持ち。旋律的にもアラビア風の装飾に彩られて独特な表現力を生み出す。タランタは自由リズムであり、タラントは2拍子の強いアクセントを持つ。1と同じに、このカウントを4拍子として < 1・2・3・4 / 1・2・3・4 > として数える方が一般的である。
歌の形式

タランタと同様、タラントの歌は難しい歌とされる。コプラ(短詩)は8音節の5行か6行で構成され、1行目か2行目を繰り返す。
レトラ紹介

Tarantas(タランタス)
En la oscura galería, *mare,
con el barreno en las manos
me estoy jugando la *via
*pá lo poquito que gano,
ay, que mala suerte es la mía.
暗い坑道のなかで俺は削岩機を手に
鉱夫の人生を過ごす、
それも僅かな金を稼ぐ為、
ああ、何たる不運なんだ!
*mare = madre
*via = vida
*pá = para