ティエントス
フラメンコ曲種解説

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TIENTOS ティエントス

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名前の由来と歴史

言語的な起源は、ラテン語の temptare(誘惑する)を意味する。20世紀初期、カディスではゆっくりとしたタンゴを“タンゴ・ティエント”と呼び始めた。その後、タンゴとは区別されティエントスという名前となった。ディエゴ・エル・マルーロがティエントスの発案者とされ、エンリケ・エル・メジーソがその普及者であり、マヌエル・トーレ、パストーラ・パボン、ラ・ニーニャ・デ・ロス・ペイネス等が彼からティエントスを受け継いだ歌い手たちである。メジーソが生み出したカディスのタンゴ・ティエントを、アントニオ・チャコンが、この曲をレパートリーに取り入れ貢献した。彼の生み出したティエントは音楽的に旋律豊かなスタイルを持つものであった。現在の名前を付けたのはチャコンであると言われている。20世紀の初めの20年が、ティエントスがもっとも全盛期であった。
特色

ティエントスはカンテホンドのように重々しくて胸を打つ曲調に似ているが、実際はタンゴから派生されたタンギーリョ、ガロティン、ファルーカ、マリアーナスと同系統である。ティエントスは踊り向きの曲のひとつである。その踊りは美しく、威厳があり、控えめで官能的である。ギターとカンテが放つ崇高な深みを得ながら、踊りと一緒に増大する。踊りの場合、タンゴとティエントを自由に組合せて構成され、一般的に最後にタンゴのリズムになって終わる形がとられている。
音楽形式

ラを主音とするナチュラル旋法。タンゴと同じ2拍子のリズムで形成されている。1コンパスを2拍子 ×2 小節とし、ゆっくりと穏やかで厳粛な全体に深みを持っている曲調である。ギター演奏でのリズムの取り方はタンゴと違い、1拍を不均一な3連で割り、拍子と拍子の間を微妙に長く伸ばしたりする粘りのあるリズムでアクセントを打つ。
歌の形式

構成はタンゴと同じで8音節の3行詩か4行詩である。ロマンスの詩歌に基づき、韻律の反復句の一連である。歌詞は哀切と感情のセンチメンタルで名言を含んだものが多い。また、他の歌詞は逸話的であるのが特色で、ドラマチックな状況に関する痛みを物語っている。
レトラ紹介

カンテ・フラメンコ選曲集より VIDEO AIREシリーズ(エンリケ坂井 訳)
Quien tiene pena no duerme
y yo siempre estoy durmiendo,
con esto quiero decirte,
gitana, ya no te quiero.
悩みをもつ者は眠れないと言うが
俺はいつでもよく眠れる、
つまり俺が言いたいのは、ヒターナよ、
おまえをもう愛してないということさ。